なんかですね。
”大物”が全部組み上がって、てっきり峠を越えたのかと思ったら・・・
「小さな部品で面倒な事」が待ち構えていました。4E-FEエンジン。
測定している時から「なんかこの部品群のバラツキの度合いって・・・・確率と統計学の学習に使えるよな。こんなにばらついていていいのか?トヨタ」って思っていたんだけど・・・・
逆に「コントロールされたバラツキ」なんだと気がつく事になりました。
これらの部品が、一番上にあるカムシャフトと燃焼室上端にあるバルブの間に挟まって、「クリアランス調整」を司っているんだそうです。
丸い板が、”シム”で、その”シム”を受け持つ丸い筒が・・・なんていうんだ?まあ、”台座”にしておこう。
バイブルによるとその「シムとカムシャフトの間の隙間が規定値に収まるように調整する事」って書いてある。
はいはい。んじゃ、まずは買っておいた「シクネスゲージ」が役に立つ場面なのねって?????
ぜんっぜん入らないぞ。シクネスゲージ。
オイルポンプのところに引き続きなので、かなり困惑。どういうこと?私の扱い方がおかしいのか?
う〜ん????
悩んでいるところにAE86レースの彼が登場。
「いやあ、先日のヘッドボルトの件は、ありがとうねえ。ホントに住んでなかったんだね。保管ガレージに。」
「まだ言うか。たまたま会う確率が高いだけだよ。」
状況を説明すると・・・・「ちょっとクランク回させてね。」
その後が・・・結局、大変な事になりました。
「これさあ・・・カムシャフトの組み方間違ってる。」
へ?バイブルの通りに組んだよ。
「いや、カムとバルブの位置関係がおかしい。ダメだよ。これじゃ。」
どうも、見る人が見ると一目でわかってしまうような間違いらしいです。私には全然わからんけど。
「ま、とにかくちょっと動きの確認させてね。・・・え?なにやった?クランクこんなに重くなっちゃってる。動き始めが全然堅いじゃん。いったいなにやった?」
いや、なにやったって・・・・ほんとにバイブルしか信じるモノがないから、その通りにやったべさ。
パッと外観をチェックしてくれて・・・「ヘッド周りの接着剤が多すぎるんだよ。ほら、はみ出してる。」
結局、カムシャフトを止めている部品を全部外して、アドヘシブ1324を塗り直す事になりました。
「接触面全部に付けるんじゃないんだ。本当に外のところに塗るだけでいい。そうしないとカムシャフトのところまではみ出して来ちゃって、焼き付きの原因になるよ。」
接着剤を塗り直して、もう一回クランクを触ってもらって・・・
「よし。この動き出しなら大丈夫。で、クリアランスがなんだって?」
状況を説明して、シクネスゲージで隙間を測定してもらおうとするんだけど・・・
「これ・・・使いにくいなあ。誰が買った?このシクネスゲージ。”ロング”のシクネスゲージじゃないと、バルブクリアランス測定は難しいよ。」
で、ホントに入らない。シクネスゲージ。やっぱり。
その後、シクネスゲージの保管の仕方まで指導。
「いい?ペラペラの板だから、扱いが雑なのかもしれないけど、これでも立派な測定器なの。ボンネットの上になんて置いていたら、厚さで膨張しちゃうでしょう?ちゃんと日陰において、必要な時だけ握るんだよ。」
先日のシム測定の時に厚みを揃えたモノを16個入れた事を説明。
「う〜ん・・・じゃあ、とにかく16個全部測定してみな。ひょっとしたら、シムが入るところもあるかもしれないから。」
・・この隙間測定ってさ、結局カム(=クランク)を回転させないと、各バルブの隙間って測定できないじゃん。
すごく時間をかけて、クランクを回しながら全部の隙間を測定していたら・・・
「あっ!カムシャフト1周させちゃったのか?」
「うん。1周だけじゃなくて、何周も。だって、測定しにくいんだもん。」
ものすっごく大変な事をしていたらしい。あの、「カムの組み方間違ってる。」の件で。
「まずいなあ・・・組み方があってないカムで、クランクを回したら、ピストンとバルブが当たるかも・・・」
ええっ!どうしよう。せっかくプロの職人さんがヘッド周りを作業してくれたのに。
「ヘッドを取り外して確認していい?バルブがおかしくなってないか。」
「う〜ん・・・いや、もう、シリンダーヘッドガスケットを入れて締め込んじゃったもんなあ・・・」
「それって、別に挟み込んであるだけだから、影響ないんじゃないの?」
「いや・・・まずいよ。ガスケットは。1周させる途中で、なんかガツンって当たる感じとかあった?」
「全然。クランクが動き始めたら、全然スムーズに回ったよ。」
結局、ヘッド周りはバラさずにそのまま作業を進める事にしました。
「たぶん大丈夫。」って、自分に言い聞かせて。
結局、どうもそのプロにお願いしたヘッド周りの影響で、手持ちのシムではまったくクリアランス調整ができないのでは?ということになった。
後日、トヨタ部品共販でシムだけを購入。
「あの・・シムだけで1万円を超えちゃうんですけど・・・
本気ですか?」
「・・・・(高いんだなあ。シムって。)ええ。いいです。お願いします。」
その後もなんだか何度も確認されてから発注してくれた。
もう一度、AE86レースの彼から指導。買ってきたシムをジャラジャラ〜。
「は?なにやっちゃってるの?何でこんなにいっぱいシムを買ってるの?」
「吸気側、排気側でクリアランスが違うみたいだから、8コづつ買ってきた。厚み違いで。」
「そんな事、普通しないよ!せいぜい3とか4個だよ。シムを買うのって。」
そうかあ・・・どおりでトヨタ部品共販の人たちから何度も念押しされたんだ。
でも、そんなに外していなかったみたい。8コづつ作戦は。
吸気側、排気側で統一したシムの厚さになるから、全部いったん交換してみる事になった。
交換作業は・・・
バイブルによると「磁石を使って隙間から・・・」って書いてあるんだけど・・・磁石持ってないし。
オーナーと二人で、カムシャフトをいちいちバラす事にしました。
どっちにしろ、「正しいカムの組み方」をAE86レースの彼から指導を受けなきゃいけない。
全部交換して、測定を開始すると・・・おっ!今度はちゃんとシムが入る。全部測定できるよ。
どうも、カムシャフトの組み方も「カムシャフトギア部にある印」をバイブル通りに合わせていなかったのが原因らしい。(印がヘッドカバーと平行になるように)
全部測定して、彼にデータを提出すると・・・
「ああ、買ってきたシムの厚さがだいぶあってたんだね。まずは、エンジン修理書に書いてある推奨クリアランスに近づけようか。」
「近づけるって・・・・なんか別の方法があるの?」
「ああ、推奨クリアランスじゃないところに”本当のいい値”がある場合もあるんだ。今までやってきたすべての作業の仕上げだからね。このバルブクリアランス調整は。すごく大事な作業だよ。」
なんだかその後も、小難しい事をいろいろ言ってくれたけど、よくわかんないや。
とにかくまたカムをバラして、シムを入れ替えて・・・疲れた。
もう一度、彼にデータを見てもらう。
「う〜ん・・・だいたい、いい値かなあ。本当は0.01mm単位で16個全部揃えるんだけどね。」
「は?」
なに言ってるんだろう?
だって、シムの厚さは、0.05mm単位でしか売ってなかったんだよ。トヨタ部品共販では。社外品があるってこと?
「違う違う。それじゃN1レギュレーション違反。台座さ。このシムを置く台座の方に厚みの違いがあるんだ。」
はあ。んじゃ、ノギスで台座をはかるか。もう一回。エンジン2基分あるから、32個ね。
全部計り終えるぐらいにAE86レースの彼がやってきて・・・
「あ、それ、違うところ測定してるぞ。」
「へ?だって、厚みっていたら、この筒の高さ寸法の事でしょ?」
「違う違う。ノギスで測定できるところじゃない。シムが収まる丸いスペースのところ。このシムを置く板そのものの厚みを測定するんだ。」
・・・・・試しにマイクロメータを差し込んで測定してみると・・・確かに1つづつ厚みが違う。
・・・・・32個?これから測定?
ムッキ〜!もうやだっ!
こんなの16個0.01mm単位で隙間を揃えてるなんて、どうかしてるよ!
結局、シムの厚み調整はこのままとぼけるんだけど、翌日からオーナーは寝込みました。ホントに疲れた。